子どものワクチンについて

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お子さんが生まれると、生後2か月からワクチン接種が始まります。

ワクチンは、怖い病気からお子さんを守る効果があることは皆さん理解できると思いますが、ワクチンに対する不安や疑問をお持ちの親御さんは少なくないと思います。

ワクチンに関して誤解されやすい点や、わかりにくい部分について、小児科医の視点から解説します。

なぜワクチンを接種するか?

世の中にはワクチン接種で予防できる病気がいくつかあります。

昔は小児科で猛威を振るっていた怖い病気でも、ワクチンのおかげでほとんど出会わなくなったものもあります。たとえば、生後2か月から接種が始まるヒブワクチンというものがあります。ヒブ感染症は、細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎といった、命に関わる重い病気を引き起こします。ワクチンの普及によって、ヒブ感染症によるこのような怖い病気を、小児科医が出会う機会はほとんどなくなりました。

「病気になったこと」を実感するのは簡単ですが、「ワクチンのおかげで病気にならなかったこと」を実感することは難しいです。ですが、多くのお子さんがワクチンの恩恵を受けて、怖い病気にならずに成長できているのです。 予防接種で防げる病気で命を落とすお子さんが一人でも少なくなるよう、小児科医として願っております。

ワクチン接種は生後2か月から

ワクチン接種は生後2か月から始まります。
まだ赤ちゃんのお世話にも十分慣れたとは言えない時期かもしれませんが、この頃からワクチン接種を始めるのには大事な意味があります。

赤ちゃんは生まれた時にはお母さんからもらった免疫がありますが、月日が経つにつれそれが徐々に低下していきます。そのため、生後2か月からワクチン接種を開始し、感染症に弱い期間を作らないようにすることが重要です。また、ワクチンで防ぐことができる病気の数は増えてきており、その分、接種するワクチンの数も増えています。生後2か月の段階から、スケジュールに沿って接種を進めていかないと、間に合わないこともあります。

妊娠中~出産前から、ワクチンのスケジュールについて確認しておくのが良いでしょう。接種がためらわれる場合は、出産前からご家族とよく相談して、医師の意見も聞いておきましょう。

ワクチンの副反応は?

本来の目的(免疫が付くこと)以外の反応を「副反応」と言います。

副反応で多いのは、熱が出たり、接種した部位が腫れたりすることです。これらは1~2日で自然に良くなるため、特に問題になりません。重症な副反応として、アナフィラキシーという重症のアレルギー反応や、けいれんや脳炎、ギランバレー症候群などの神経の病気を起こすこともありますが、頻度は稀です。重篤な副反応の頻度は、10万接種に1回くらいと言われています。

ワクチンの種類「生ワクチンと不活化ワクチン」

生ワクチンは、弱体化させた病原体そのものを使ったワクチンです。
基本的に感染力はないのですが、何らかの病気や治療によって免疫力が低下している場合は、注意が必要になります。

不活化ワクチンは、病原体そのものではないので、感染力は全くありません。
生ワクチンよりは免疫がつきにくく、1回の接種では免疫の持続も短いため、同じワクチンを複数回追加で接種する必要があります。

ワクチンの種類「定期接種と任意接種」

定期接種=自治体が主体となって行うもの
任意接種=接種する本人が主体となって希望に基づいて行うもの

定期接種は費用がかかりませんが、任意接種は自己負担になります(自治体によっては無料)。
任意接種のワクチンも、安全性や効果は十分に証明されているものであり、重要な感染症のワクチンも多いです。日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールに記載されているワクチンは、定期接種と任意接種を区別せず、全て打った方がよいと考えています。

同時接種について

適切な時期に必要なワクチンをすべて打つためには、同時接種が必要になります。
同時接種は安全な投与方法であり、それによって副反応が増えたり、ワクチンの効果が落ちたりすることはありません。

複数のワクチンを同時に打っても、別々の日に分けて打っても、副反応が出る確率は同じです。 1本のワクチンを接種することで起こるリスクを「1」としたとき、2本のワクチンを同時に接種した場合のリスクは「2」です。別々の日に接種したとしても、「1+1」で合計のリスクは「2」に変わりありません。同時に接種したからといって、リスクが「3」や「4」に上がることはありません。

デメリットをあげるとすれば、体調を悪くしたときにどのワクチンが原因か特定しにくくなるということがありますが、必要なワクチンを必要な時期に接種するためには許容されるところかと考えます。

まとめ

「病気にならなかったこと」を実感することは難しいものです。
そのため、ワクチンの恩恵を特に感じることなく元気に大人になっていくお子さんは多いと思いますが、その中にはワクチンのおかげで救われている子がたくさんいるはずです。

多くの親御さんが、ワクチンに対して正しい知識を身につけ、安心して接種をすすめられるよう願っています。 なお、私も所属している日本小児科学会から、「知っておきたいわくちん情報」というものが公開されています。一般の方向けにわかりやすく書かれておりますので、よければそちらもご覧ください。

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