乳幼児の尿路感染症

症状と病気

尿路感染症は乳幼児の発熱の原因の一つです。
子どもの発熱の原因は、圧倒的に風邪(ウイルス性急性上気道炎)が多いものの、尿路感染症は乳児の発熱のおよそ7%程度と報告されており、小児科の現場ではよく遭遇する病気です。

尿路感染症とは

「尿路」とはその名の通り「尿が通る道」のことで、尿が作られる”腎臓”、尿をためる”膀胱”、この2つをつなぐ”尿管”、最後に尿が出る”尿道”、これらをまとめて尿路といいます。これらのうち、腎臓に感染が起きたものを”腎盂腎炎”といい、膀胱に感染が起きたものを”膀胱炎”といいます。特に問題になるのは腎盂腎炎の方ですが、乳幼児では腎盂腎炎と膀胱炎を区別することが難しいので、まとめて”尿路感染症”という診断名をつけて治療をしていきます。

尿路感染症の原因は?

尿路感染症は、尿路に細菌が侵入することで起こります。
通常は尿路に細菌はいません。「尿」は汚いというイメージがあるかもしれませんが、実は尿は無菌なのです。

尿路感染症の原因となる細菌は、ほとんどが大腸菌です。大腸菌は便の中にいる菌であり、尿道から侵入して尿路感染症を起こします。

尿路感染症の症状は?

発熱が唯一の症状であることも多く、症状だけで尿路感染症と診断を付けることは難しいです。逆に、一般的な風邪でみられる咳や鼻水などの症状がないということが、診断に役に立つこともあります。

症状を訴えることができるお子さんでは、排尿時の痛みや頻尿、腹痛や背部痛を認めることもありますが、そもそも尿路感染症は2歳未満の乳幼児に多いため、痛みがあるかを判断できないことが多いです。

尿路感染症の診断方法は?

診断のためには尿検査が必要です。

乳幼児の尿を採取する方法は、陰部にパックを張って採取する”パック尿”とカテーテル(管)を尿道に挿入して採取する”カテーテル尿”があります。

パック尿は痛みがなく、だれでも簡単に採取できることがメリットですが、偽陽性となることも多く、いつ尿が出るかわからないという問題点もあります。正確な結果を得たい場合やすぐに検査をした方がいい場合はカテーテルで尿を採取します。

尿路感染症の治療は?

抗生物質(抗菌薬)で治療を行います。

入院して点滴の抗生物質で治療をスタートすることが一般的です。治療前にどんな菌が悪さをしているのかを調べる検査(培養検査)を提出しますが、結果が分かるまでは数日かかります。その結果が判明し、飲み薬でも治療可能な菌であるとわかった場合、飲み薬に変更して退院します。

症状が良くなっても、処方された分の薬はきちんと飲み切るようにしましょう。

尿路感染症は繰り返すの?

再発率は多くないものの、尿路感染症に罹ったお子さんの10%前後が、もう一度尿路感染症を発症するとされています。尿路感染症を繰り返す場合は、尿路になにか原因となる病気がないか、検査をすることが多いです(1回目の発症でも検査を進めることもあります)。

尿路感染症の予防法は?

一般的には陰部を清潔に保つことが挙げられます。排便があればおむつ交換をして、陰部を拭くときは前から後ろに拭くようにしましょう。
ただし、どんなに気を付けていても乳幼児の尿路感染症を完全に予防することは難しいです。なってしまったからといって自分の育児の仕方を責める必要はありません。

また、便秘は尿路感染症のリスクになることがわかっています。便秘にお悩みの際は小児科へ相談してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました