頭痛は小児科でもよく出会います。
意外かもしれませんが、小児の救急外来受診患者のうち、1%程度は頭痛が主訴です。
今回は、こどもの頭痛ではどんな原因が多いのか、どんな頭痛は要注意かを、日本頭痛学会に所属する小児科医として解説します。
一次性頭痛と二次性頭痛
頭痛は、一次性頭痛と二次性頭痛にわけて考えます。
二次性頭痛とは、何かの病気があって「二次的」に頭痛の症状が出てくるものです。例えば、脳腫瘍や感染症、脳出血などが原因になることがあります。一次性頭痛とは、そのような原因となる病気がないものです。
一次性頭痛のほうが多いのですが、二次性頭痛のほうが怖い病気がおおいため、頭痛診療の第一歩は二次性頭痛を否定することから始まります。一次性頭痛としては違和感があるときは、頭の画像検査(CTやMRI)などを行います。
二次性頭痛を考えるサインとは?
痛みが強すぎる場合や頭痛以外に気になる症状がある場合は、注意が必要です。
痛みが強すぎる場合というのは、以下のように表現されます。
- 痛み止めが全く効かない痛み
- 表現できないくらい痛い
- 雷に打たれたような痛み
- バットで殴られたような痛み
- 人生最大の痛み
頭痛以外の気になる症状にはこのようなものがあります。
- ぐったりしている、反応が鈍い
- 目の動きや見え方の異常
- 手足の動かしにくさ、歩行のふらつき
また、睡眠中や起床時の頭痛や、後頭部だけ痛い場合は、一次性頭痛としては典型的ではありません。より慎重に判断します。
一次性頭痛にはなにがあるか?
多くの頭痛が一次性頭痛です。
そして一次性頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛という2つの頭痛がほとんどです。
片頭痛の特徴は、頭の片側にズキンズキンとする痛みがあります。
ドクンドクンと血管の拍動に一致して痛みがあることが多く、「拍動性の頭痛」などと表現されます。
吐き気や嘔吐、光や音に過敏となる症状を伴うことがあります。
中くらいから強い痛みで、頭痛があると日常生活が送れないほどの方もいます。お子さんの場合は、片側ではなく両側(特に前の方)に痛みがあることも多いです。
緊張型頭痛の特徴は、頭の両側にギュウギュウと締め付けられるような痛みがあります。
吐き気や光・音過敏はないことが多く、あっても程度は軽いです。
痛みの強さは、軽いもの~中くらいであり、病院を受診しない方も多いです。
片頭痛の治療は?
一次性頭痛の中でも、痛みが強くて困ってしまう患者さんが多い「片頭痛」の治療について説明します。
片頭痛は「薬物治療」と「非薬物治療」に分けて考えます。「非薬物治療」というとイメージがしにくいと思いますが、日常生活や環境を整えてあげることです。それだけでも頭痛がぐっと減ったり、症状が和らぐお子さんもいます。
片頭痛の非薬物治療(環境調節)
- 早寝・早起き・朝ご飯の規則正しい生活を心がけましょう。どうしても難しいお子さんは、以下の点からはじめてみましょう。
・朝起こすときに何回か声かけをする(怒鳴ったり怒ったりしてはいけない)
・カーテンを開けて朝日を部屋に入れて、布団をはがす。
・夜は眠れなくても、普段の就寝時間より30分はやく布団に入り、消灯する。 - 症状がないときは適度に運動を行いましょう。散歩などの軽いものでよいです。
- スマホやゲームをやり過ぎない。
- 片頭痛の誘因があれば避けましょう。一般的に、チョコレートやチーズ、空腹、まぶしい光などが誘因となることがあります。
- 十分な睡眠をとり、睡眠不足にならないようにしましょう。夜は眠れなくても、普段の就寝時間より30分はやく布団に入り、消灯するのがよいです。
片頭痛の薬物治療
頭痛があるときに和らげるお薬(急性期治療)と、頭痛が出ないように予防的に飲むお薬(予防治療)があります。
急性期治療でよく使われているのは、イブプロフェン(ブルフェン®など)とアセトアミノフェン(カロナール®など)です。これらが効かない場合は、片頭痛に特化した痛み止めである「トリプタン製剤」という薬を使うこともあります。ただし、小児患者にはまだ適応のない薬であり、独特な副作用もありますので、お医者さんとよく相談してください。
予防治療は、元気な時でも常にお薬を飲まないといけなくなるため、特に生活への支障が大きいお子さんに行います。痛み止めを使っても生活に支障のある頭痛が月に何回かある場合、予防治療をした方がよいかお医者さんと相談してください。
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