心肺蘇生法

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あなたは目の前で倒れた人に手を差し伸べることはできますか?

残酷な真実として、目の前の命を救えるのは、救急隊でも医師でもなく目の前のあなただけです。

いつだれがどこで心肺蘇生を必要とする状況に出くわすかはわかりません。心肺蘇生法は医療従事者のみならず、一般市民のみなさまも身につけるべきものであると私は考えます。
今回は、小児科ブログとしては番外編になりますが、心肺蘇生法に関して解説いたします。

心肺蘇生の重要性

「1分ごとに10%」

目の前で人が倒れたとします。
電気ショックが必要な不整脈だった場合、心臓が止まってから1分経つごとに、救命率は7~10%低下することが分かっています。
心臓が止まってから5分経つと半分の方が亡くなってしまうということになります。

「救急車到着まで8分42秒、病院到着まで39分30秒」

一方で、119番通報をしてから、救急隊が到着するまでと、そこから病院に搬送されるまでは、こんなに時間がかかります。
その人の運命を決めるのは、救急隊でも医師でもなく、目の前のあなたの行動にかかっています。

とはいえ、ためらう気持ちもよくわかります。
私も、飲食店で突然倒れた男性に駆け寄ったことが一度ありますが、とってもドキドキしたのを覚えています。BLS(一次救命処置)のインストラクターの資格を持っていたにも関わらず、そんな状態でした。

一般の方が心肺蘇生をするということの勇気といったら、計り知れないことはよくわかります。
それでも敢えて言います。残酷な事実として、目の前の命を救うことができるのは、目の前のあなただけなのです。

心肺蘇生をためらう理由と誤解

一般市民の方が心肺蘇生を行うにあたって、ありがちな不安について説明します。

市民の皆様
市民の皆様

助からなかったら訴えられることはありませんか・・・?

悪意または重過失がなければ責任を問われることはないとされています。
「重過失」とは、ほとんど故意に近い激しい不注意の状態です。処置が上手でなかったために不幸な結末になったからといって、善意で行った処置に対して責任を問われることはありません。

市民の皆様
市民の皆様

心臓が動いている方に間違って胸骨圧迫をしてしまっても大丈夫でしょうか・・・?

心臓が動いている方に胸骨圧迫をしてしまっても、それによって害を与える可能性は低いです。
一般市民の方にとっては、胸骨圧迫が必要なのかどうかの判断が難しく感じるかもしれません。ですが、迅速な胸骨圧迫が命を救うために重要です。判断に迷ったら、躊躇せずに胸骨圧迫を開始してください。

市民の皆様
市民の皆様

骨が折れたりすることはないですか・・・?

折れることはありますが、命を救うことが最優先です。

骨折を恐れて胸骨圧迫をしなかったり、力を加減したりすると、結局その人を助けることはできません。しっかりと胸骨圧迫を行い、命を救うことを最優先に行動してください。

市民の皆様
市民の皆様

人工呼吸は抵抗があります・・・

人工呼吸はしなくてよいです。

胸骨圧迫だけでも、人工呼吸を行う場合と同様の効果があることが分かっています。
人工呼吸は、訓練を積んで技術がある方で、人工呼吸を行う意思がはっきりある場合にのみ行ってください。

市民の皆様
市民の皆様

必要ない人にAEDを使って、心臓を止めてしまうことはありませんか・・・?

AEDは心臓がけいれんを起こしているような異常状態の時にしか作動しません。

装着さえできればあとは機械が正確に判定するため、自分で電気ショックが必要かどうかを判断する必要はありません。AEDの解析は非常に正確なので、このような心配はしなくてよいです。

救命の流れ

① “意識”の確認

「大丈夫ですか!?わかりますか!?」などと大声で呼びかけ、意識の確認をします。反応がない場合・判断に迷う場合は②に進みます。

反応がある場合は何があったかを本人に聞いて、必要に応じて119番通報を行います。救急隊の到着までは傍を離れずに様子を見守ってください。

② 周りに助けを求めて、119番通報とAEDを依頼する。

「誰か来てください」と助けを呼んで、119番通報とAEDを探して持ってくるように依頼します。
119番通報した携帯端末はスピーカーモードにして近くに置いてもらうといいでしょう。そうすると救急隊から指示をもらいながら対応することができます。

周りに誰もいない状況であれば、自分で119番通報をしましょう。携帯端末はスピーカーモードにして、救急隊から指示をもらいながら蘇生処置を続けましょう。

③ “呼吸”を確認する。

普段通りの呼吸をしているかを確認します。
呼吸をしていない場合や、あえぐような呼吸しかしていない場合、判断に迷う場合は④に進みます。

正常な呼吸をしている場合は、救急隊の到着まで離れずに様子を見守ります。

④ “胸骨圧迫”を開始する。

胸の真ん中をしっかり深く押します。心臓は左側のイメージがあるかもしれませんが、押す場所は胸の真ん中です。
圧迫のペースは1分間に100~120回が適切です。「世界に一つだけの花」や「地上の星」が1分間に100回のテンポ、「夏色」が1分間に120回のテンポです。

そして、絶え間なく胸骨圧迫を続けることが重要です。一人では疲れてくるので、周りの方と交代しながら行いましょう。

⑤ “AED”が到着したら速やかに使用する。

最初にやることは、AEDの電源を入れることです。機器によっては蓋を開けた時に自動で電源が入るものもあります。このとき、胸骨圧迫を中断してはいけません。AEDを他の誰かに操作してもらうか、胸骨圧迫を代わってもらいましょう。

AEDの電源が入った後は、AEDの音声案内に従います。やることは、電極パッドを胸に貼り、パッドのコネクタをAEDに接続することです。その後は自動で心電図の解析が行われ、電気ショックをするべきかどうかを機械が教えてくれます。

電気ショックが必要な場合は、「離れてください!」と大声で言い、誰も患者に触れていないことを確認して、ショックボタンを押します。ショックボタンを押した後や、ショックが不要と判断された場合は速やかに胸骨圧迫を再開します。

最後に

心肺蘇生法は、一般市民の方にも是非とも身につけていただきたいスキルです。

正しく対応できるようになるには、頭で理解するだけでなく実践練習が必要です。
「○○市 救命講習」などで検索をすると、お住いの地域で行われている講習を調べることができます。消防庁などが無料で行っているところが多いので、是非積極的に参加してくださるとうれしいです。あなたの行動で一つの命が助かるかもしれません。

さらに詳しく学びたい方は、日本ACLS協会が開催する、「ハートセイバーCPR AED」というコースを受講することがおススメです。開催場所や開催日は限られますが、受講生には日本ACLS協会から認定証が発行されます。

【参考ページ】
一般社団法人 日本循環器学会 https://www.j-circ.or.jp/cpr/index.html
東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu-adv/life01-2.html

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