起立性調節障害(起立性低血圧)

症状と病気

起立性調節障害は、起き上がった時や午前中に、調子の悪さやだるさ、頭痛、立ちくらみ、吐き気などの症状がでる病気です。起立性低血圧と呼ばれることもあります。
小学校高学年~中学生にかけて増えてくる病気で、症状の軽い方も含めると、中高生の15~30%にあるとされています。

朝に症状が強いため、学校に行けなかったり、遅刻したりすることがあります。その一方で、午後から夜にかけて元気になってくるため、「学校をサボりたいだけ」や「ただの怠け」と勘違いされて、辛い思いをすることもあります。

起立性調節障害は、お子さんも、周りの大人たちや友人たちも、正しく理解することがとても大切になります。起立性調節障害の正しい理解のためにこの記事が参考になりますと幸いです。

起立性調節障害はなぜ起こるの?

起立性調節障害の原因は、自律神経の働きの悪さです。
寝た状態から急に起き上がったり、長時間立ったままでいたりすると、重力で血液が下半身に集まってしまいます。このままだと、頭への血液が足りなくなってしまい、立ちくらみなどの症状が出てしまいます。そこで、通常であれば自律神経が働いて、頭や大事な臓器への血流を保つシステムが発動します。 起立性調節障害では、自律神経の働きが悪く、このシステムが十分に働かないために症状が起こります。

起立性調節障害の症状は?

起立性調節障害の症状は様々です。
一般的に以下のようなものがありますが、全部が出るわけではありません。

立ちくらみ、めまい、失神、入浴時や嫌なことを見聞きしたときの気持ち悪さ、動悸、息切れ、顔面蒼白、食欲不振、頭痛、腹痛、疲れやすさ、乗り物酔いなど。

これらの症状が、午前中に強く、朝に起きるのが苦手という特徴もあります。

起立性調節障害はどうやって診断するの?

まず大事なのは問診です。
上記のような起立性調節障害としての症状があるかを聴取します。さらに、どのような時にどんな症状がでるのか。平日と休日で症状は変わるか。どうすると楽になるか。などを詳しく聞いていきます。

次に、それらの症状を起こすような原因がないかを、診察や検査で調べていきます。
はっきりとした原因が見つからない場合、起立性調節障害とします。 症状から起立性調節障害と診断し、他に原因となる病気が隠れていない場合は、横になっているときの血圧と起き上がったときの血圧を比較する検査をします(新起立試験)。この検査で、起立性調節障害の分類と、重症度を判断します。

起立性調節障害の治療は?

治療は、薬を使った治療(薬物治療)とそれ以外(非薬物治療)に分けられます。

「病院は薬を貰うところ」というイメージの方も多いと思いますが、起立性調節障害の治療でメインとなるのは「非薬物治療」です。重症度が高い場合や、非薬物治療で上手くいかない場合に、薬物治療へと進みます。

非薬物治療にはなにがある?

まず一つ目は「疾病教育」です。
簡単に言うと、お子さんと親御さんが、その病気を正しく理解することです。

起立性調節障害は、身体の病気です。一方で、心理的なストレスが病気を悪化させることがありますので、間違った認識を正し、心理的なプレッシャーの少ない環境にすることが重要です。
「怠け癖」や「気持ちの問題」と間違ってとらえられることが多いですが、そうではないことをお子さんも親御さんも理解するだけで、気持ちが和らいで症状が軽くなることもあります。

次に日常生活と環境の改善です。その一部を紹介します。
 ・水分と塩分をしっかり摂りましょう。
 ・起き上がるときはゆっくり。つらいときは頭を下げた状態で。
 ・早寝早起きの生活リズムを。難しい場合は以下の点から。
  朝何回か声かけをする(怒鳴ったり怒ったりしない)。
  カーテンを開けて、布団をはがす。
  夜は眠れなくても、就寝時間になったら消灯する。
 ・日中は身体を横にしない。
 ・毎日散歩などの軽い運動をする。

起立性調節障害を学校にお話しするかは、デリケートな問題なのでお子さんとよく相談する必要があります。ただ、学校へもきちんとお話して、お子さんが通いやすい環境を整えてあげることは理想的です。学校にもよく理解してもらい、午後からの登校や別室登校を認めてもらうことで、お子さんの負担が軽くなり、症状と上手に付き合っていけるようになることもあります。それに必要な診断書などは病院で作成できますので、ご相談ください。

長くなりましたが、非薬物治療の一部を紹介いたしました。
これらで良くならない場合は、薬物療法や、心理士による心理療法などを行うことがあります。

間違えやすいところ ~「貧血」とは?~

最後に余談ですが、間違えやすい言葉「貧血」についてお話しして終わります。

ふらっと倒れてしまうことを「貧血」ということがありますが、それは正しくありません。ドラマとかでも、倒れた人が「いつもの貧血でした。ご心配なく。」なんてシーンがありますが、あれは間違った使い方をしています。 「失神」というのが正しく、起立性調節障害は「失神」の原因として多い病気です。
「『失神』の原因が『貧血』ってことなんじゃないの?」という方もおりますが、それも正しくありません。「貧血」の症状は息切れやだるさが多く、「立っていて倒れる」というのは「貧血」の症状としては一般的ではありません。

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