- ヒトメタニューモウイルスはかぜの症状を引き起こすウイルスです。
- 低月齢の乳児や基礎疾患のあるお子さんでは重症化することもあります。
- 特効薬はありません。
ヒトメタニューモウイルスとは?
2001年に発見された比較的新しいウイルスなので、聞き馴染みのない方も多いウイルスかもしれません。しかし、ヒトメタニューモウイルスは、代表的なかぜ症状を起こすウイルスです。ちなみに、長い名前ですがヒト/メタ/ニューモ/ウイルスと4つの要素が含まれています。
その特徴はRSウイルスと似ているところが多く、RSウイルスについては以前記事を書かせていただきましたので、よろしければこちらをご覧ください。
これまで、春先にピークを迎える年が多かったですが、1年中発生が確認されており、年によって流行の時期は変わります。特に2022年度は夏から秋にかけても大きく流行した印象があります。国立感染症研究所の検出報告数も8月~11月に多かったようです。
ヒトメタニューモウイルスに注意するのはどんな子?
大人や年長のお子さんが感染しても、ほとんどがかぜの症状で終わります。
RSウイルス同様、月齢が浅ければ浅いほどリスクは高く、呼吸困難や食事・哺乳ができないなどの理由で入院になることも珍しくありません。
大きいお子さんでも、持病や基礎疾患がある場合は重症化することもあります。 このようにリスクが高いと思われるお子さんでは、最初は元気そうでも場合によっては入院で様子をみることもあります。
ヒトメタニューモウイルスの症状は?
咳や鼻水、のどの痛みといったかぜの症状が出ます。
熱が出ることもあります。ほかのウイルスによるかぜと比べて、激しい咳き込みがある患者さんも多いです。 症状は数日経ったところでピークを迎え、1~2週間程度続きます。1回感染した方でも繰り返し感染することもあります。
危ないサインとは?
ヒトメタニューモウイルスが重症化したときのサインは以下の通りです。
これはヒトメタニューモウイルスに限らず、RSウイルスなどのその他のウイルスでも同様です。
- 普段と比べて呼吸が早い
- 呼吸が苦しそう
- 息を吸うたびに鼻の穴を膨らませている
- 息を吸うたびに肋骨の下、鎖骨の上、首のつけ根がべこべこへこむ(陥没呼吸)
- ゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえてくる
- 顔色が悪い
- 呼吸が止まるときがある(無呼吸発作)
- 哺乳できなくなってきた
このような症状が出た時は速やかに病院を受診してください。
ヒトメタニューモウイルスの診断は?
症状からは、ヒトメタニューモウイルスと断定することはできません。
鼻の奥を綿棒で拭って迅速診断キットを使って調べることがオーソドックスな診断法です。
新型コロナウイルスやRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどの20種類近くのウイルスをいっぺんに調べる方法もあり、大きい病院などではそちらが使われることも多いです。
ただし、ヒトメタニューモウイルスと診断がついても特にやることは変わらないので、診断をつけることに大した意味がない患者さんも多いです。
そのため、絶対に検査しないといけないウイルスというわけではありません。特に、症状が軽い年長のお子さんでは、基本的に検査は不要です。
ヒトメタニューモウイルスの治療は?
ほとんどのウイルスと同様に、ヒトメタニューモウイルスに特効薬はありません。
痰を出しやすくするお薬などを使うことがありますが、それ自体が病気を治すわけではありません。
入院になるケースでも、酸素投与や点滴を行いながら、自分の免疫の力で治っていくのを待つことになります。
なかには、細菌性肺炎や気管支喘息という病気を合併することがあります。
これらは治療薬があるので、それに対する治療を行うこともあります。
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