小児科の重要な感染症として髄膜炎というものがあります。
名前から病気がイメージしにくいのと、頻度がそこまで高くないことから、一般の方にとっては馴染みのない感染症かと思います。
今回は髄膜炎について、小児科・小児神経内科の視点から解説いたします。
髄膜炎とは?
まず「髄膜」とはなにか?についてお話します。
髄膜とは、脳みそ(と脊髄)を覆っている膜のことです。脳みそをおにぎりにたとえると、髄膜はサランラップです。
その髄膜に病原体が感染することで、髄膜炎が起こります。
髄膜炎の症状は?
頭(脳みそ)の感染症なので、頭の症状が特徴です。
これらが髄膜炎の一般的な症状です。
- 発熱
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 意識障害(ぐったりする、ぼんやりする、やたら興奮しているなど)
- けいれん
乳幼児の場合は症状がはっきりしないことも多く、不機嫌が目立つ、なんとなく元気がないなどの症状だけのこともあります。
「これがあれば髄膜炎」もしくは「これがないから髄膜炎ではない」というような絶対的な症状はありません。
髄膜炎の種類は?
髄膜炎は以下の2つに分かれます。
- 細菌性髄膜炎
- ウイルス性髄膜炎
致死率・後遺症が高く、小児科医が特に恐れているのは「細菌性髄膜炎」です。
一方で、頻度が高いのは「ウイルス性髄膜炎」ですが、後遺症を残さず自然に治るケースがほとんどです。
他に、結核性髄膜炎や真菌性髄膜炎などもありますが、今回は割愛します。
髄膜炎の診断は?
診断に重要な検査は「髄液検査」です。
髄膜炎であれば、髄液のなかの細胞の数が上がります。髄液とは、脳みそと髄膜の間を満たしている液体です。腰の背骨のところから針を刺して髄液を採取します。
細胞の数が上がっていて髄膜炎と診断された場合でも、この時点では「細菌性」と「ウイルス性」を明確に区別することは困難です(大まかな予想は可能ですが)。確定するためには、数日間かけて髄液の培養検査というものを行い、細菌が検出されるかを見ていきます。
また、血液検査やCT・MRIなどの頭の画像検査も参考にすることが多いです。
髄膜炎の治療は?
細菌性髄膜炎の場合は、速やかな抗菌薬(抗生物質)の治療が重要です。
ウイルス性髄膜炎の場合は、有効な治療薬のない場合がほとんどですが、その場合は基本的に自然に治ります。一部、抗ウイルス薬が必要なものもありますが、例外的です。
髄膜炎の予後は?
細菌性髄膜炎の場合、適切に治療が行われても、命を落としたり後遺症を残してしまうことがあります。最近のデータでは、致死率が5%程度、後遺症が15%程度とされています。
ウイルス性髄膜炎の場合は、後遺症を残さずに治ることがほとんどです。
髄膜炎の予防方法は?
細菌性髄膜炎の予防には、ワクチン接種が有効です。
肺炎球菌とインフルエンザ桿菌という2つの細菌が原因のほとんどを占めますが、これらには有効なワクチンがあります。インフルエンザ桿菌はワクチン接種により激減しており、肺炎球菌も減少しています。
細菌性髄膜炎は、免疫が未熟な生後4か月~5歳に多いとされており、生後2か月からの適切な時期のワクチン接種が重要です。
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