こんにちは。小児科医のかなけいです。
今回は、近年増加傾向にある神経発達症(発達障害)の一つ、自閉スペクトラム症(ASD) について、保護者の方に向けてわかりやすくお話ししたいと思います。
自閉スペクトラム症(ASD)とは?
自閉スペクトラム症(ASD)は、「他者との関わり方やコミュニケーション」に困難を抱える発達の特性です。ASDのお子さんには、次のような傾向が見られることがあります。
- 人とのやりとりや会話が苦手
- 言葉の使い方や理解の仕方に特徴がある
- 興味や行動がかたよりやすい(同じ遊びを繰り返す、強いこだわりなど)
- 音や光、においなどの刺激に敏感または鈍感
ただし、これらはすべての子に当てはまるわけではなく、症状の程度も個人差が大きいのが特徴です。
ASDは育て方のせい?
これはよくある誤解なので最初に説明しておきます。
ASDは生まれつきの特性であり、親御さんの育て方が原因ではありません。
これまで様々なASDのお子さんを診察してきており、合わせて様々な親御さんを見てきました。ASDの親御さんに共通した育て方というものはなく、ある親御さんは「私が厳しくし過ぎたのでしょうか?」またある親御さんは「私が甘やかしすぎたのでしょうか?」と真逆のことをお話されます。このことからわかるように、厳しくし過ぎたからなっちゃった、甘やかしすぎたからなっちゃった、というものではありません。
もちろん、厳し過ぎる育児や、過度に甘やかすことが良いというわけではありませんが、それがASDの原因になっているということはありません。
ASDのよくある特徴
- 表情やことばで気持ちを伝えるのが難しい
- 相手の気持ちを想像するのが苦手
- 興味が一部に集中しやすい(数字や乗り物など)
- スケジュールの変化に不安を感じやすい
- 感覚(音、光、においなど)にとても敏感
これらの特徴が生活に影響するかどうかが大切なポイントです。
大事なのは診断を下すことではなく、その「特徴」によって児が困っているのならば、「自閉スペクトラム症」と診断をして、必要な支援や治療をしていきます。
私はよく親御さんに、「視力」を例にして説明しています。視力2.0は良い、視力0.1は悪い、では視力0.8くらいはどうでしょう?その視力で困っていれば、眼鏡をかけたり、前の席にしてもらったりという対応が必要ですが、困っていなければ特に何も必要ありませんね。ASDを含む神経発達症(発達障害)も「ある」「ない」の2択ではありません。自閉スペクトラム症の「スペクトラム」とは「連続体」という意味であり、正常と異常とが連続しており、その間に当てはまる子がたくさんいることを意味します。
- ASDかどうかははっきりしなくても、困っているならば支援の仕方を変えてみる
- ASDかどうかははっきりしなくても、のびのびと楽しくしているならそのまま見守る
治療と支援について
ASDそのものを「治す薬」はありません。
治療の目的は「その子らしさを大切にしながら、生活のしにくさを減らすこと」です。
療育・社会的支援
ASDのお子さんやご家族を支える仕組みはさまざまあります。
- 発達支援を行う施設(児童発達支援や放課後デイサービスなど)での療育
- 学校や先生方との連携による学習面・生活面のサポート
- ペアレントトレーニングやペアレントメンター制など、親御さんが適切な支援方法を身に着ける取り組み
- 療育手帳や特別児童扶養手当など、行政の制度を活用する方法
薬物療法
必要に応じて、以下のような薬が使われることもあります。
- 睡眠のサポート:メラトニン、甘麦大棗湯
- かんしゃくや強いイライラ:抑肝散、リスペリドンなど
ご家庭でできる工夫
診察室でよくお伝えしているのは、「わかりやすさ」と「安心感」を生活に取り入れることです。そしてその結果、お子さんの「できる!」を増やして成功体験をたくさん積んでいくことです。これが自尊心や自己肯定感を育み、良好なお子さんの発達に繋がります。
- 成功体験を増やす:できたことをしっかり褒める
- 見通しを示す:絵カードやスケジュールで「次に何をするか」を伝える
- ことばは短く具体的に:「片付けてね」より「ブロックを箱に入れてね」
- 感覚への配慮:苦手な音やにおいを避ける
- 「まあいいか」と思える余裕をもつ:保護者の安心感は子どもの安心感につながります
まとめ
ASDは「得意なことと苦手なことがはっきりしている」という特徴があります。どうやったらその子の得意を活かせるかを考えて、成功体験を積み重ねていきましょう。
大切なのは診断名よりも、「お子さんがどんな場面で困っているか」「どうしたら安心して生活できるか」を一緒に考えることです。
困ったときは一人で抱え込まず、小児科や発達支援機関にご相談ください。



コメント