「周りの子より発達が遅い気がする」
「言葉がなかなか増えない」
こうしたご相談は、小児科でもとてもよくあります。そしてその中で出てくる言葉のひとつが「知的発達症(ちてきはったつしょう)」です。
ただ、この言葉はとても重く感じるかもしれません。実際、診断名そのものが目的ではありません。大切なのは、「診断名」ではなく、その子がどうすれば過ごしやすくなるかです。
この視点を強調しつつ、この記事では、できるだけわかりやすく説明していきます。
知的発達症ってなに?
知的発達症とは、考えたり理解したりする力(知的機能)の発達がゆっくりなため、日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
もう少し具体的にいうと…
例えば、
- 話の理解に時間がかかる
- 学校の勉強についていくのが大変
- 身の回りのこと(持ち物管理など)が苦手
- 人とのやりとりがぎこちない
といった様子がみられることがあります。
よくある誤解ですが、「勉強が苦手」や「発達が年齢の割にゆっくり」ということだけでは診断されません。重要なのは「生活全体」であり、家庭や保育所、学校での生活をとおして、日常生活(着替え・食事・コミュニケーションなど)や学業への支障度を見て判断します。
IQって大事なの?
「IQが低いと知的発達症ですか?」とよく聞かれます。少し詳しい方だと「IQが70以下」という具体的な数値を知っている方もいるかもしれません。
これは目安のひとつではありますが、IQだけで診断は決まりません。
実際には、日常生活でどのくらい困っているか、年齢に応じた生活ができているかということが重要です。
なぜなら、IQは少し低いけど、日常生活は問題ない、あるいは、IQはそこまで低くないけど、生活に大きな困りごとがある。
こういうことが実際にありえます。つまり、「実際にどれだけ困っているか」のほうがとても大事です。
どんなときに気づくの?
年齢によって気づくきっかけは違います。
乳幼児期
- 言葉がなかなか出ない
- 指示の理解がゆっくり
- 全体的に発達がゆっくり
幼児期
- 集団行動についていくのが難しい
- 遊びや活動の理解が難しい
学童期(小学生)
- 読み書きや計算がなかなか身につかない
- 宿題にとても時間がかかる
- 生活面でも「うまくいかないこと」が増える
軽い場合は、小学校に入ってから気づかれることも多いです。
間違えやすいほかの疾患
「発達が遅い」と見える原因は1つではありません。
- 自閉スペクトラム症(ASD) コミュニケーションの「質」が特徴的
- 注意欠如・多動症(ADHD) 集中しにくい・ミスが多い
- 限局性学習症 特定の分野(読み・書き・算数など)だけ苦手
知的発達症の原因は?
原因はひとつではありません。知的発達症の原因はさまざまです。
- 生まれつきの体質(遺伝など)
- 出生時の影響(早産など)
- 病気やケガ
- 環境要因
ただし、「育て方や関わり方」あるいは「教育のしかた」が原因ということはありません。ここはとても大切なメッセージです。
治療薬はあるの?
結論から言うと、基本的に薬で治す病気ではありません。
では何をするのかというと、
- 療育(発達をサポートする支援)
- 学校でのサポート(特別支援教育や合理的配慮)
- 福祉制度の利用
などを組み合わせて、その子に合った環境を整えることが一番大切です。
「早く診断したほうがいいですか?」という質問に対しては、支援を必要としているお子さんには、「早く診断すること」よりも「早く適切な支援につながること」が大事です。必要な支援を提供することによって、生活しやすさや学びやすさが向上し、自信を失いにくくすることを目指します。さらにそのことによって、家族の安心感も増します。
診断が確定していなくても、療育や支援は始められることが多いです。そして診断はゴールではなくスタートラインです。そこから「どう支えていくか」これを一緒に考えていきましょう。


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