日本人は睡眠が短いです。
OECD加盟諸国の平均睡眠時間8時間25分に対して、日本は7時間22分で最下位でした。ちなみに、アメリカは8時間48分と第一位、スペインやフランス、イタリアも8時間30分以上であり、「先進国はすべて短い」というわけでもありません。
特に1970年以降、日本人の夜型生活化が加速していると言われております。
仕事などで仕方なく夜に活動をしないといけない人もいますが、どちらかというと夜型生活が当たり前となっていて、自己研鑽や動画視聴などの趣味に時間を使って寝るのが遅くなる人が多いようです。
そして、日本人の短時間睡眠は大人だけではありません。
0~3歳の子どもの睡眠時間を国別に比較した調査では、調査対象の諸外国の平均睡眠時間が12時間32分だったのに対して、日本人は11時間36分で最下位でした。
大人の睡眠時間が短いと、子どもの睡眠時間も短くなる傾向があります。
今回は子どもの睡眠について、小児神経科医の視点から解説します。
睡眠は生活の基盤でありその重要性はもはや言うまでもありません。特に子どもは、脳も身体も成長途中にあるため、成長のために欠かせない睡眠は、大人以上に大切だと考えます。
理想の睡眠時間とは?
アメリカの国立睡眠財団の推奨睡眠時間は以下の通りです。
- 0~3か月 → 14~17時間
- 4~11か月 → 12~15時間
- 1~2歳 → 11~14時間
- 3~5歳 → 10~13時間
- 6~13歳 → 9~11時間
- 14~17歳 → 8~10時間
「思ったより長い!」と感じられた方が多いのではないでしょうか。先述したように、日本は大人も子どもも睡眠時間が短い国のため、この推奨時間ほど眠る時間を確保できているお子さんは少ないです。
最大の原因は「夜型生活」
子どもの睡眠不足は、小学校高学年~中学生から、特にその傾向が目立ちます。
睡眠時間が短いということは、シンプルに「起きる時間が早い」か「寝る時間が遅い」かのどちらかですが、起きる時間は、睡眠時間が足りていた小学校低学年の時と、睡眠時間が不足しがちな小学校高学年~中学生でほとんど変化がありません。一方で、寝る時間については、学年が上がるにつれて、明らかに遅くなっていきます。この夜型生活こそが睡眠不足の大きな原因です。
年長のお子さんは、受験勉強やクラブ活動、友人との付き合いなどなど、いろんな理由で就寝時間が遅くなりがちです。もちろん、一度きりしかない学生時代をどう過ごすかは、その子や家族の自由です。しかし、睡眠時間を削ることには大きなデメリットが伴いますので、そこまでして夜更かしするメリットはあるのかと今一度よく考えてほしいです。
睡眠不足のデメリット
「睡眠不足は身体に悪い」というのは皆さんもなんとなくわかると思いますが、科学的にも睡眠不足のデメリットは証明されています。睡眠不足によって引き起こされるデメリットには以下のものがあります。
- 脳の海馬(記憶などに重要)の容積が小さくなる。
- 日中の眠気
- 集中力や記憶力の低下
- 認知機能の低下
- 行動や感情の制御がうまくいかない(いらいらしやすい)
- うつっぽくなる
- 頭痛などの身体症状が出る
- 成長ホルモンの分泌や免疫能に異常がでる
このように、集中力や記憶力、認知機能など、知能や学習に関わるデメリットがたくさんあります。お子さんの中には、受験勉強を夜遅くまで頑張って睡眠不足になっている子もいるかもしれません。頑張る姿勢は応援したくはなりますが、むしろ頑張れば頑張るほど学校の成績が悪化するようでは、せっかくの努力がもったいないです。
「睡眠時間をしっかり確保したうえで、残りの時間で勝負したほうが実は良いのではないか?」
今一度考えてみましょう。
理想の睡眠のためにできること
- 日中に太陽光を浴びよう
- 夜に光を浴びない
- 日中は身体を動かしましょう。
- 休みの日もなるべく平日と同じ起床・就寝時間で生活しましょう。
- 朝ご飯を食べましょう。
- 寝室に娯楽(ゲームなど)を持ち込まないようにしましょう。
- 夕方以降はカフェインの摂取は控えましょう。
- 「睡眠日誌」を付けましょう。(インターネットでダウンロード可)
- 無理な早寝をしない。まずは起きる時間から手を付けよう。
<日中に太陽光を浴びよう>
日中に太陽の光を浴びることで生活リズムが整います。朝~昼(特に10~11時)に光を浴びると朝型に体内リズムがセットされます。
室内の光では不十分で、太陽の光をしっかりと浴びることが重要です。
なんと太陽の光は、雨の日でもオフィス照明の5倍の強さ、曇りでは10倍、晴れの日はなんと100倍もの光を放ちます。オフィス照明もずいぶん明るく見えますが、太陽光の威力はすさまじいです。
<夜に光を浴びない>
それとは反対に、17時以降(特に0時前後)に光を浴びると夜型に体内リズムがセットされます。これを光位相反応といいます。
夕方以降はなるべく部屋の明かりは暗めにして、テレビやスマートフォンなどの強い光は必要最小限にするよう努力しましょう。
最後に
睡眠が子どもの健康・成長に与える影響は、多くの方が考えているよりも大きいです。
お子さんの学生生活が充実し、心身ともに健やかに成長していくよう、睡眠を見直してみてはいかがでしょうか。
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